最低賃金のおさらい

2019年10月より地域別最低賃金が改定されています。使用者が労働者に対して最低賃金額未満の賃金を支払った場合には、最低賃金との差額を支払わなければなりません。地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法の違反として「50万円以下の罰金」の対象となりますので、改定後の最低賃金を下回っていないか、改めて確認しておくことをお勧めいたします。

東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県では、2019年10月1日より下記の通り地域別最低賃金が改定されています。

地域別最低賃金時間額(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)
地域名最低賃金時間額発行年月日最低賃金時間額上昇額
東京都1,013円2019年10月1日(985円)28円UP
神奈川県1,011円2019年10月1日(983円)28円UP
埼玉県926円2019年10月1日(898円)28円UP
千葉県923円2019年10月1日(895円)28円UP
特定最低賃金時間額(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)

最低賃金には地域別最低賃金の他に、産業別の特定最低賃金があり、地域別最低賃金と特定最低賃金のどちらか高い方を適用する必要があります。
※2019年12月に埼玉県、千葉県で特定最低賃金が改定されましたので、改定情報を反映しています。

【東京都】
2019年10月1日時点で地域別最低賃金が特定最低賃金を上回っています。

【神奈川県】
2019年10月1日時点で地域別最低賃金が特定最低賃金を上回っています。

【埼玉県】
2019年10月1日時点で下記産業以外は地域別最低賃金が特定最低賃金を上回っています。
2019年12月1日時点で下記産業以外は地域別最低賃金が特定最低賃金を上回っています(改定)。
非鉄金属製造業・・・944円
電子部品・デバイス・電子回路、電気機械器具、情報通信機械器具製造業・・・951円
輸送用機械器具製造業・・・ 961円
光学機械器具・レンズ、時計・同部分品製造業・・・ 959円
自動車小売業・・・957円

※下記に掲げる者は特定最低賃金の対象外となります。
(1)18歳未満又は65歳以上の者
(2)雇入れ後3月未満の者であって、技能習得中のもの
(3)次に掲げる業務に主として従事する者
イ 清掃又は片付けの業務
ロ 手作業による包装、袋詰め、箱詰め又は運搬の業務

【千葉県】
2019年10月1日時点で下記産業以外は地域別最低賃金が特定最低賃金を上回っています。
2019年12月25日時点で下記産業以外は地域別最低賃金が特定最低賃金を上回っています(改定)。
鉄鋼業・・・ 993円
電子部品・デバイス・電子回路、電気機械器具、情報通信機械器具製造業・・・951円
※下記に掲げる者は特定最低賃金の対象外となります。
(1)18歳未満又は65歳以上の者
(2)雇入れ後3月未満の者であって、技能習得中のもの
(3清掃又は片付けの業務に主として従事する者
(以下は電子部品・デバイス・電子回路、電気機械器具、情報通信機械器具製造業のみ)

(4)次に掲げる業務に主として従事する者
イ 主として手作業による又は手工具若しくは小型電動工具、操作が容易な小型機械を用いて行う部品の組み立てのうち、組線、巻線、端末処理、はんだ付け、取付け、穴あけ、みがき、刻印打ち、かしめ、バリ取り、材料の送給、選別の業務
ロ 塗油、検品の業務
ハ 手作業による袋詰め、包装の業務
ニ 軽易な運搬、部品等の整理、賄い等の雑役業務

最低賃金のQ&A

Q1 2019年10月1日に改定された最低賃金はいつ支払う給与から適用されるのか?
A1 支払日ではなく、2019年10月1日以降の勤務に掛かる給与から適応となります。例えば月末締めの翌月15日払いの場合、11月15日支給の給与から改定後の最低賃金が適用されます。

Q2 日給制や月給制の場合、最低賃金時間額の比較はどのように行ったら良いのか?
A2 日給制、月給制の場合でも、下記の計算で時間額を算出して計算します。
(日給制)
 日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金時間額
(月給制)
 月給÷1箇月平均所定労働時間(※1)≧最低賃金時間額
 ※1 月平均所定労働時間=1年間の合計所定労働時間÷12

Q3 最低賃金額の対象となる賃金はどの賃金か? 残業代込みの総額で良いのか?
A3 毎月支払われる基本的な賃金(基本給+諸手当(一部手当を除く))が対象となります。具体的には実際に支払われる賃金から下記の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。特に通勤手当や時間外割増賃金が含まれない点にご注意下さい。

【最低賃金の対象とならない賃金】
・臨時に支払われる賃金(慶弔手当など)
・1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
・所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
・所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
・午後10時から午後5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
・精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

Q4 派遣社員は給与の支払いを行う派遣元の地域別最低賃金を適用するのか?
A4 派遣社員の場合、勤務地である派遣先の地域別最低賃金が適用されますので、ご注意下さい。

おわりに

10年前(2009年)の東京都お最低賃金は791円でしたので、この10年で最低賃金額は大きく増加しています。もし既存のスタッフの賃金額が最低賃金を下回っていた場合には、最低賃金以上の賃金を支払うよう雇用契約を変更する必要がありますが、勤続年数による昇給額よりも最低賃金の上昇額が高い会社の場合、長年勤めたスタッフと新しく入ったスタッフの賃金額がほぼ変わらない状況になる可能性もございます。こういったケースでは長年勤めたスタッフの中に不満とモチベーションの低下が生まてしまうこともありますので、雇用契約の変更の際に誠意をもって説明し、長年貢献してくれているスタッフの理解を可能な限り得ていくことをお勧めいたします。